研究概要 |
ヒト着床現象や胎盤形成において、母児間での相互作用が極めて重要であることが判明した。すなわち、着床部においては母体脱落膜中のリンパ球、マクロファージは活性化状態にあり、多数のサイトカインを産生している。特に着床時子宮内膜に著増するCD16^-CD56^<bright>NK細胞からはM-CSF,G-CSF,GM-CSF,LIF,IFNγ,TNFα,TGFβ_2などが産生される。これらサイトカインにつき考察を加えたい。まずM-CSFは胎盤絨毛細胞の増殖・分化を誘導し、胎盤形成に役立つ。またLIFは着床に必須のサイトカインであることが知られており、本NK細胞が着床反応に重要な役割をはたすことが判明した。IFNγ,TNFαは絨毛細胞上のHLA-G発現を高めることが予想されるが、HLA-GはNK細胞からの攻撃を防ぐことが報告されている。すなわち絨毛細胞は本NK細胞から産生されるサイトカインによりHLA-Gを発現し拒絶をまぬがれていると解釈される。また、CD16^-CD56^<bright>NK細胞はIL-2によりLAK活性を獲得し、絨毛細胞を攻撃するが、自身の産生するTGFβ_2ならびに絨毛細胞から産生されるTGFβ_2はT細胞から産生されるIL-2産生を抑制し、絨毛細胞がNK細胞からの攻撃をうけるのを防いでいると考えられた。このように着床局所において母子相方から産生されるサイトカインは着床現象、胎盤形成、妊娠維持と深く関わっており、かつ巧妙に調節されていることが明らかとなった。また脱落膜中に著増するCD16^-CD56^<bright>NK細胞の増殖や生存に胎盤絨毛細胞、脱落膜間質細胞から産生されるSCFが重要な役割を果たしていることもあわせて明らかとなった。この他、胎盤絨毛細胞からのhCG放出や増殖にtyrosine kinaseが重要であることも明らかとなった。
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