子宮内膜癌の組織発生には二つのタイプがあり、前癌病変とみなされる内膜増殖症を伴うものと、エストロゲン非依存性で内膜増殖症をともなわず閉経後に好発する症例とがあり、それぞれ異なる発癌因子が働いているものと考えられている。 このような子宮内膜癌の組織発生および進展過程における遺伝子変化の解明には、初期病変の検索が最も有用であり、内膜癌の発生に寄与しているであろう連続した様々な遺伝子変化をとらえるには、細胞個々が隣接細胞と三次元構築を保ったままの状態で遺伝学的検索をすることが必須と考えた。しかし、切片の厚さが増すにつれ通常の蛍光顕微鏡では個々の細胞形態と遺伝子コピーとの詳細な関係の観察が不可能になった。そこで、正常子宮内膜、内膜増殖症のパラフィンブロックを使用し、20から30ミクロンの切片を作製した。これらを、すでに報告した方法にそってペプシン処理等を行なった後にFISH法を適用した。発癌に関与が予測される第1番、6番、7番、16、17、18番染色体特異的セントロメアプローブはploidyの評価に用いた。FISH法によってハイブリダイズした内膜病変のパラフィン切片を共焦点走査型レーザー顕微鏡で観察し、光学的連続切片を作製した。これを画像解析装置による三次元像再構築し、組織構築を保ったまま各細胞毎のコピー数を算定した。増殖性病変から癌への移行の可能性について、染色体プロィデイの検討は有意義である。第16、17、18番染色体の欠失が増殖症病変および内膜癌で検出されたので、一部の増殖性病変は癌化すると考えられた。癌組織では1番染色体の増加が観察されたが増殖性病変では観察されなかったことから、1番染色体のpolysomyは内膜癌の発生過程では最初におきる変化ではないと考えた。
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