今年度の研究目標は、私共がクローニングしたニシン精子活性化蛋白質遺伝子のcDNAをプローブとしてヒト卵巣cDNAライブラリーを検索することによりヒト精子活性化蛋白質遺伝子をクローニングすることである。 結果1)ヒト卵巣λgt10cDNAライブラリー(米国Clontech社より購入)を検索した結果、ポジティブと考えるえられるλファージクローンを4クローン得ることが出来た。2)これらのクローンに含まれるcDNAがどの様な遺伝子に由来するかを調べるためにそれらの塩基配列を決定することを試みた。インサートのcDNAはλファージDNAのEco RIサイトに入っているので、ファージDNAを制限酵素Eco RIで処理し電気泳動したところ、いずれのクローンについても複数のDNAバンドがラダー状に泳動されることがわかった。アガロースゲルよりそれぞれのcDNA断片を回収後、プラスミドpBluescript IIへサブクローニングしたが、一つのクローンのDNAバンド(約300bp)だけサブクローニングすることが出来た。3)プラスミドに組み込んだcDNAについては5側、および3側の双方から塩基配列を決定した。得られた配列について東京大学医科学研究所のデータベイスを用いて、その塩基配列を持ったDNAが既に報告されているかホモロジー検索を行ったところ、我々の得たcDNA断片の塩基配列は、フランスの研究者等により、ヒトTリンパ芽球cDNAライブラリーよりクローニングされたcDNA断片群の一つで約300bpの大きさのcDNAの塩基配列と一致していたが、そのcDNAがどの様な働きをしている遺伝子に由来するのかということについては報告されていない。文献を渉猟した結果、このcDNAは未だ報告されていない新しい遺伝子に由来するものであると考えられる。 次年度は、クローニングした遺伝子の構造決定、およびそれら遺伝子が卵巣のどの細胞で発現しているかをin situ hybridization法により検討する事を計画している。
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