運動精子の選別回収のために、新しくスイムシフト法を考案検討した。これは、精子浮遊液のスポットと回収用のスポットを培養液の通路でつなぎ、オイルで覆い、2時間培養して運動精子を回収する方法である。重症男性不妊5例にて、従来のスイムアップ法では精子濃度200万/ml・運動率80%の回収成績であったのが、スイムシフト法では800万/ml・85%の回収成績に改善した。精子先端反応惹起物質の検討では、dilauroyl phosphatidyl cholineの0.25.50.100および200μM処理によるハムスター卵受精率(卵数)は、それぞれ2.4%(209).6.3%(255).2.3%(215).2.7%(257)および2.5%(243)であり、ヒト精子に対しての若干の効果は認められるも、あまり有効でないと考えられた。また、囲卵腔拡大のためのsucrose高張溶液処理は、当初0.5M sucroseを用いて検討したが、0.1Mで充分な縮小効果があり、卵に対する毒性もより少ないことが分かったので減量した。さらに、囲卵腔内精子注入(SUZI)に際し卵損傷率が高いことに対しては、以下の技術改良により成績の改善を試みた:(1)マイクロマニピュレーターを4台使用、(2)マイクロインジェクターを使わず、ガラス注射器を直接用手的に操作、(3)チューブ内のフロリナ-トを空気に変更、(4)卵保持ピペットと補助針を用いて遺残卵丘細胞を必要最小限に除去、(5)穿刺ピペットのベ-ベルを卵に向ける、(6)穿刺ピペットと補助針で透明帯をつまんで穿刺。その結果、重症男性不妊における採卵あたり受精率・胚移植率・継続妊娠率は、通常体外受精で20%・0%・0%、改良前SUZIで82%・35%・0%であったのが、改良後SUZIで80%・70%・30%へと改善した。
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