<目的>我々の研究室では、子宮体癌由来培養細胞株SNG-IIを免疫原として作成したモノクローナル抗体MSN-1が、子宮体癌組織と高率に反応し、多くの子宮体癌症例の追跡調査から、その反応性と予後との間に関連が見いだせることについて報告してきた。また、MSN-1の認識抗原が主として血液型関連糖鎖ルイスbであり、その抗原が、癌化によって生じる因子の中でも予後を左右する可能性が高いことから、当院で治療を受けた子宮体癌症例において、血液型関連糖鎖の表現型と、ルイスb型糖鎖の構築に関与する糖転移酵素の遺伝子型につき検索を行った。 <対象>過去15年にわたり、当院で子宮体癌の切除を受け、その後経過観察中にその組織のMSN-1反応性及び、ルイス式血液型を調べ得た症例。 <方法>過去15年間に得られた子宮体癌組織のパラフィン包埋切片を、MSN-1を用いて、ABC法にて染色し、症例毎の反応性を判定する。また、フォローアップ時に採取した患者血液中の、赤血球表面におけるルイス式血液型関連糖鎖の発現と、MSN-1認識抗原の発現の関連について検索した。 <結果>先天的にMSN-1認識抗原を構築するために必須と考えられる酵素の失活しているとされるルイスa、bともに陰性を示す症例が4例得られたが、そのいずれもがMSN-1反応陽性であった。また、同酵素が活性を持つと考えられる他の症例中に、MSN-1陰性症例が散見された。 <考察>赤血球表面の表現型とMSN-1反応性に不一致が見られることから、癌化によるMSN-1認識抗原の発現に対し、何らかの遺伝子上の変化が起こっている事が予想されたため、現在各症例の白血球から抽出したゲノムDNAと、組織切片から抽出した癌組織でのDNAを用いて、PCR-RFLP法を用いた遺伝子型の検索を行っている。
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