研究概要 |
我々は子宮体癌に極めて高い特異性を示すモノクローナル抗体MSN 1を作製し、その認識抗原が主として血液型関連糖鎖のルイスbであり、癌化に伴い発現が増加することを明らかにしてきた。そこで今回ルイスb型糖鎖が末端にフコースを有していることに着目し、ルイスb型糖鎖構造の構築に関与する糖転移酵素の一つであるフコース転移酵素 IIIについて遺伝子レベルで解析し、MSN-1認識抗原の発現との関係を検討した。 Le遺伝子は、フコースをα1, 4結合で転移するフコース転移酵素-IIIをコードしており、ある特定の部位に点突然変異が生じると活性が失われることが明らかとなり、PCR RFLP法を行うことでその活性の有無を遺伝子型として検出することが可能である。そこで、当研究室で継代維持している女性性器癌由来の各種培養細胞株を用いて、PCR RFLP法により遺伝子型の検索を行った。またこれらの遺伝子型とMSN-1認識抗原の発現パターンの相関性について免疫組織化学に検討を行った。 遺伝子型は、Le/Le型、Le/le1型、Le/le2型およびle1/le1型の4種類が存在した。対立遺伝子としてLe遺伝子を含めば活性型となるが、遺伝子型が不活性型(le1/le1)の細胞はMSN-1陰性であり、認識抗原の発現は見られなかった。今後はLe遺伝子が直接MSN 1認識抗原の構築に関与しているか否かを明確にするために、遺伝子型が不活性型である細胞にフコース転移酵素-IIIのcDNAをtransfectionし、認識抗原の発現という表現型の変化が起こるかどうか検索する予定である。また、ルイスb型糖鎖の構築にはフコース転移酵素-IIIのみならず、α1, 2-フコース転移酵素の関与も示唆されるので、α1, 2フコース転移酵素のcDNAを用いてその発現をmRNAのレベルで検索することを考慮している。
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