研究概要 |
平成6年度の研究実績をふまえて、平成7年度においては正常子宮体内膜のみならず、子宮体癌についての解析を行い以下のような成績を得た。 1.子宮体癌ならびに子宮頸癌あるいは卵巣癌由来株における硫酸化糖脂質の発現を主に35Sトレーサー実験を用いて解析した。その結果、子宮体癌由来株に特異的に硫酸化糖脂質の発現を認めた。またその組成は細胞株により異なり、高分化癌由来Ishikawa株においては主にスルファチドが発現するのに対し、中、低分化癌由来のSNG-M, HEC108においてはラクトシルスルファチドが発現されており、分化度と硫酸化糖脂質の発現形式に関連があることが示唆された。さらに正常子宮体内膜の検討にて確立した硫酸糖脂質関連酵素(硫酸基転移酵素;STと略、ならびに硫酸基分解酵素;ASAと略)の活性を測定し、体癌由来細胞株に特異的にST活性の亢進を認めた。ASA活性はやや体癌株において高い傾向を認めたが、ST活性ほどの差異は認められなかった。以上のことから体癌における硫酸化糖脂質の発現は、亢進したST活性によるものであることが示唆され、硫酸化糖脂質の発現と共に、体癌の生物学的特性の一つであることが示唆された。 2.子宮内膜における硫酸糖脂質の発現と性ホルモンの関連を明らかにするため、子宮体癌由来株の一つであるIshikawa株を用いてエストロゲンならびにプロゲステロンの添加実験を行った。その結果、非添加群に比べ、エストロゲン添加群において約1.6倍、エストロゲン+プロゲステロン添加群において約2倍のST活性の亢進を認めた。ASA活性はホルモン添加により著明な変化は認めなかった。以上のことから体癌株における硫酸化糖脂質の発現には、ST活性の変化を介して性ホルモンが関与している可能性が示唆された。
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