研究概要 |
本研究では、1.子宮体内膜におけるスルホトランスフェラーゼ(ST)及びアリルスルファターゼA(ASA)の量的変化に関する解析 2.子宮体内膜における硫酸化糖脂質の局在 3.子宮体内膜における硫酸化糖脂質の細胞接着への関与の解明を目指して以下の成果を得た。1.正常体内膜組織におけるSTならびにASA活性を測定した結果、ST活性は増殖期に比べ分泌期に活性の亢進が認められたのに対し、ASA活性は逆に、増殖期の活性が分泌期に比べ亢進していることが判明した。従って子宮体内膜における硫酸化糖脂質の発現量の変動には、ST活性とASA活性が関与していることが明らかになった。さらに、子宮体癌ならびに子宮頚癌あるいは卵巣癌由来株における硫酸化糖脂質の発現を主に35Sトレーサー実権を用いて解析した。その結果、子宮体癌由来株に特異的に硫酸化糖脂質の発現を認めた。またその組成は細胞株により異なり、高分化癌由来Ishikawa株においては主にスルファチドが発現するのに対し、中・低分化癌由来のSNG-M,HEC108においてはラクトシルスルファチドが発現されており、分化度と硫酸化糖脂質の発現形式に関連があることが示唆された。またST活性は体癌由来細胞株に特異的に認められた。ASA活性はやや体癌株において高い傾向を認めたが、ST活性ほどの差異は認められなかった。以上のことから体癌における硫酸化糖脂質の発現は、亢進したST活性によるものであることが示唆され、体癌の生物学的特性の一つであることが示唆された。2.新たに作製された硫酸化糖脂質スルファチドに対するモノクローナル抗体を用いて、子宮体内膜における硫酸化糖脂質の局在を免疫組織化学的に検討したところ、その局在はおもに腺上皮細胞であることが判明した。3.子宮内膜における硫酸化糖脂質の発現と性ホルモンの関連を明らかにするため、子宮体癌由来株の一つであるIshikawa株を用いてエストロゲンならびにプロゲステロンの添加実験を行った。その結果、エストロゲン+プロゲステロン添加群において約2倍のST活性の亢進を認めた。以上のことから体癌株における硫酸化糖脂質の発現には、ST活性の変化を介して性ホルモンが関与している可能性が示唆された。
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