トリプシン様セリン酵素似対する合成基質であるGlu-Pro-Arg-パラニトロアニリド(以下基質)を用いてAcr osin活性を測定し、精子のcapaci tationから先体反応に至る過程の観察を試みた。調製した精子懸濁液中に精漿が混入すると、精漿acrosin inhibitorの影響により酵素活性測定が困難になるため、キャピラール-攪拌密度匂配法により精漿をほぼ完全に除去した洗浄精子を調製し、これをHanks液に懸濁して37°Cで培養を行った。Triple stain法により先体反応誘起を観察し、同時に本法では精子からacrosin抽出操作を行うことなく、生存精子が懸濁した状態で基質水解能を測定した。その結果、基質水解活性が経時的に上昇することを見いだしたが、先体反応誘起率との相関は低かった。精子Triton X-100抽出液をセファデックスゲル濾過して酵素活性の同定を試みた結果、基質水解能はacrosinのみに由来するものでなく数種のアルギニンアミダーゼが存在することが明らかとなった。さらに精子懸濁液中に漏出する酵素活性についても同様の検討を行った結果、酵素活性がacrosinのみに由来しないことが示され、acrosin活性を指標とする先体反応評価の実用化が困難であることが示唆された。そこで方針を変換して組織染色法による観察法の確立を試み以下に示す結果を得た。 修正swim down法で運動精子を分離し、さらに低温処理して一時的に非動化した。先体反応を細胞分離用連通管カラム法を用いてCon Aをリガンドとするcell affinity chromatography法により精製した。先体反応未誘起精子はCaCl_2・NaHCO_3非存在下にキャピラール・攪拌密度匂配法で分離した。Man存在下に精製先体反応および未誘起精子をFlTC-ConA染色した結果、先体反応に伴い露出した先体内膜上にConAに高親和性を示す糖鎖群が局在することを認めた。360μM Manを添加することにより先体反応精子先体部を特異的に染色し得た。
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