研究概要 |
本研究は胎児発育遅延の原因として臍帯機能不全の病態を想定し、その意義を明らかにし、またその治療の可能性の基礎的検討を行うために臍帯血管内皮細胞の機能を最もよく反映する因子としてProstaglandins(以下PG)を想定し、妊娠中毒症妊婦の血清がこのPG合成にどのような影響を与えるかを検討した。正常ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)に妊娠中毒症重症、妊娠中毒症軽症ならびに正常妊婦より採取した血清200μlを加え、それぞれ2,4,8時間後に培養液を回収し、6-Keto-PGF1α,PGE2濃度をRIAにて測定した。その結果培養液中の6-keto-PGF1α濃度は正常血清あるいは血清無添加と比較して妊娠中毒症血清の添加で高値となった(軽症<重症)。さらにPGE2濃度は妊娠中毒症重症患者血清にてその産生が上昇した。 次に同様のモデルにおいてPG合成の律速酵素であるcyclooxygenase(COX)の発現を免疫組織学的方法で検討した。加えて更に、WestemblotならびにRT-PCRによりCOXのsubtype(COXI,ll)の発現を検討した。その結果、妊娠中毒症患者の血清でのみ両者の発現が亢進した。一方インターロイキン(IL8)でも同様なCOX発現の亢進が見られた。さらにこれらはHUVECのapoptosisを誘導した。以上の結果より妊娠中毒症ではPGによる臍帯機能の調節に変化が生じており、それはIL8を介する機序が関わっていることが示唆された。
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