研究概要 |
1.モノクロール抗体の作成 当初遺伝子hsp-1を発現ベクターに組み込み大腸菌で蛋白を合成してこれを用いて抗血清及びモノクローナル抗体を作成することを予定していたが、予定していたpQEベクターを用いた大腸菌での同遺伝子蛋白の発現が成功しなった。そこで、さらに種類の異なった各種ベクター及び大腸菌をもちいてその発現を試みたが現在までのところ成功に至っていない。これは、一つにはこの遺伝子hsp-1がコードする蛋白が、大腸菌自体にとり非常に致死的な影響をもつものではないかと推察できる。そこで、上記の方法とは別に、遺伝子hsp-1のDNA配列を基に合成ペプチドを作成して、これをもちいて抗血清を作成し以後の研究を行なった。抗血清の作成に際しては、遺伝子hsp-1がコードするアミノ酸を基にcomputar analysis(hydoropathy、flexibility)を行ない、抗原エピトープの可能性が最も高い領域を推定してペプチド合成を行った。その結果174-198の位置にある25アミノ酸残基が適当と考え、これを合成し、これにKLHを結合させ、完全フロイドアジュバントと共にウサギ及びマウスに免疫した抗血清を作成した。 2.抗合成ペプチドhsp-1(174-198)血清を利用した対応抗原の解析 (1)抗血清を用いて、メタノール固定したヒト精子を間接蛍光抗体法にて染色したところ精子頭部を染色することが判明した。しかし、liveの精子の染色では、明らかな染色領域はみいだせなかった。 (2)抗血清をもちいて透明帯除去ハムスター卵へのヒト精子進入阻止実験を行ったところ、対照抗血清(KLHのみ免疫したもの)に比べて、有意にヒト精子のハムスター卵への進入を阻害する事が明らかになった。 現在さらに抗血清を用いて、1)ヒト精子をCalcium ionophore,12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA),diacylglycerol(DG)で処理する事により惹起することができるヒト精子の先体反応に対する影響。2)精子での細胞内のカルシウムイオン濃度の変化への影響。3)ヒト精巣での対応抗原の局在を検討中である。
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