平成6年度より、ヒト精巣cDNAライブラリーより分離したヒト精子に発現しかつカルシウム依存性シグナル伝達機構に関与しているヒトsynaptophysinと唯一43%のhomologyを示した遺伝子h-sp-1のコードする蛋白の性状分析をおこなってきた。平成7年度は以下の実験をおこなった。 (方法)1.h-sP-1遺伝子より類推したアミノ酸配列のなかで最も抗原性の強い部分と考えられた25アミノ酸(h-sp-1のaa174-198)配列を合成した。この合成ペプチドh-sp-1(174-198)を用いて、ウサギ及びBalb/cマウスを免疫した。2.各抗血清を用いてヒト精子に対する間接蛍光染色を行い、その局在を検索した。3.受精現象に対する影響を調べるため、ヒト精子不動化試験、透明帯除去ハムスター卵へのヒト精子侵入に対する阻害作用を調べた。 (結果)1.h-sp-1(174-198)に対する抗血清の反応性をELISA法にて確認した。 2.ウサギ抗血清は、メタノール固定したヒト精子の頭部を染色した。3.ヒト精子不動化活性はみとめなかった。しかし、ハムスター試験で有為にヒト精子のハムスター卵への侵入を阻害した。 (結論)ヒト精子に発現するh-sp-lがコードする蛋白は、ヒト精子頭部に存在していることが明らかになった。さらに、ヒト精子の卵細胞への侵入過程に関与していることが明らかになった。
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