研究概要 |
規則正しい弛緩のある周期的な子宮収縮は、持続的な収縮に起因する胎児への低酸素負荷を回避する基本的な生理機序となっている。そこで、妊娠ヒト子宮筋切片を用いて、高(カリウム)/((K))拘縮および除(ナトリウム)/((Na))拘縮におよぼす外液(カルシウム)/((Ca))、外液(マグネシウム)/((Mg))、Ca拮抗剤であるニフェジピン並びにCa-ATPase阻害剤であるサイクロピアゾニック酸,ラウリルサルフェイトの効果を見る事により、ヒト子宮筋のCa調節機序の特徴を明らかにした。高K拘縮は、最大張力を示す48mMKで施行した。両拘縮共にphasicおよびそれに続くtonic相を呈するが、後者のパターンは異なった。これらの拘縮は外液Ca濃度に依存し、10^<-7>Mのニフェジピンで高K拘縮の両相は抑制され、除Na拘縮のphasic相は抑制されたが、tonic相は抑制されなかった。両Ca-ATPase阻害剤により両拘縮のtonic相は増強したが、ラウリルサルフェイトの方が効果は強かった。外液Mgを増加すると、両phasic相と高K拘縮のtonic相は一過性に増強して次第に減弱したが、除Na拘縮のtonic相は外液Mgの濃度依存性に著明に抑制された。以上の結果から、妊娠ヒト子宮筋にはNa-Ca交換機構が存在して、細胞内に蓄積したCaを速かに排出している事が推測出来た。また、同子宮筋の細胞内Caの調節には、細胞外からの流入に主に依存していて、MgイオンはNa-Ca交換機構に強く影響してる事も示唆された。
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