研究概要 |
まず我々は培養ヒト子宮内膜間質細胞を用いて、プロゲステロン(P)の性ステロイド受容体に与える影響を、我々が開発したCCDイメージセンサー及びPolymerase chain reaction(PCR)を用いた微量mRNA定量法で調べた。その結果プロゲステロンによりプロゲステロン受容体(PR),エストロゲン受容体(ER)アンドロゲン受容体(AR)のいずれも濃度依存性に遺伝子発現の抑制(約50%)がもたらされることが分かった。この結果のなかでPに関しては、免疫組織化学的染織法では子宮内膜間質細胞PRはPによる調節を受けないという推測を否定するものであった。そこでさらに検討を加えたところ、培養子宮内膜間質細胞PRは性ステロイドに関係なく時間依存性に増加することがわかり、Pはその増加を抑制することによりPR発現を一定に保つ役割を担っている可能性がある事が分かった。またテストステロン(T)による影響についても検討したところ、プロゲステロンと同様にPR,ER,ARの発現抑制をもたらすことが分かった。このTによるヒト子宮内膜細胞性ステロイド受容体の発現調節の報告は世界で初めてである。現在エストロゲンによる培養子宮内膜間質細胞PR,ER,ARの発現調節について検討中であるが、これら性ステロイドによる性ステロイド受容体の発現調節が存在する事より生体内でもこれらと同様の調節の存在が考えられる。そこでこれらの調節と不妊症との関係を、実際に不妊症患者の子宮内膜標本のPR,ER,ARの遺伝子発現量を定量し、健常婦人の子宮内膜のそれらと比較する事により解析し、性ステロイド受容体発現異常による不妊症の可能性を検討する予定である。
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