| 研究概要 |
鼻アレルギーの症状発現にマスト細胞は重要で、マスト細胞の増多に分裂増殖の関与を報告した。マスト細胞はその前駆細胞が組織で増殖・分化するとされており、鼻アレルギー鼻粘膜でその前駆細胞の存在を検討した。
1.鼻アレルギー鼻粘膜でマスト細胞に成りえる前駆細胞(前駆細胞と省略)の存在
(1)免疫三重染色の技術の確立と前駆細胞(c-kitレセプター〔c-KITと省略〕^+,トリプターゼ^-,IgE^-)の検討
鼻粘膜をc-KITのうさぎ抗体,マスト細胞(顆粒)トリプターゼのマウス抗体で二重免疫染色と核染色を施行。c-KIT^+,トリプターゼ^-細胞を確認した。脱顆粒のマスト細胞除外のため写真撮影後,脱抗体・脱色の操作後IgEを免疫染色した。マスト細胞はIgE陽性を示し,三重染色の意義を確認し,鼻アレルギー鼻粘膜ではc-KIT^+,トリプターゼ^-,IgE^-細胞の存在を確認した。この結果は前駆細胞が存在し,マスト細胞の増多への関与を示唆。
(2)鼻粘膜上皮層でのCD34^+細胞の存在
CD34^+細胞も上記の細胞と同じ性質を示すが,組織では血管内皮細胞も陽性なので鼻粘膜上皮層で検討した。その結果CD34^+細胞が存在し,(1)の技術および結果を支持できた。
2.マスト細胞増殖・分化に影響するstem cell factor (SCFと省略)の存在
鼻粘膜にはSCFの細胞外のドメイン(分泌型)および細胞内ドメイン(膜結合型を示唆)の抗体でSCFの存在を免疫染色で検討した。マスト細胞との二重染色で分泌型SCFはc-KITのリガンドであることを認めた。一方,細胞内ドメインSCFは紡錘型あるいは大型の細胞に陽性であった。鼻アレルギーでは分泌型SCF陽性細胞は上皮層で多く存在し,鼻アレルギーではこのタイプのSCFがマスト細胞への増殖・分化の関係が示唆された。
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