研究概要 |
各種サイトカイン、細胞接着分子の遺伝子検出のためのpolymerase chain reaction(PCR)法を確立し、その感度、特異性について検討を行い良好な結果を得た。本法を用いて、慢性副鼻腔炎、鼻アレルギー患者から採取した手術標本よりRNAを抽出し、サイトカイン、細胞接着分子の遺伝子発現の検討を行った。 1.慢性副鼻腔炎・上顎洞粘膜におけるサイトカイン遺伝子の発現を検討したところ、特に炎症性性格の強いIL-6、IL-α,TNF-αは検討した症例全例に認められた。一方、IL-1α、IL-1βは急性増悪期の症例で発現する傾向があった。IL-5、IFN-γなどT細胞由来のサイトカイン遺伝子の発現も高率に認められ、組織学的にも活性化Tリンパ球の存在が多数認められた。さらに、これらの細胞の浸潤に関与するICAM-1、VCAM-1、ELAM-1といった接着分子も高頻度に上顎洞粘膜に認められた。このように、慢性副鼻腔炎では種々の炎症性サイトカインの発現が認められるが、そのネットワークの形成に活性化Tリンパ球の関与が考えられた。 2.鼻アレルギー患者の鼻粘膜では抗原投与後、好酸球をはじめとして好中球、リンパ球等の浸潤が認められ病態の形成に関与するが、免疫組織学的にもこれら炎症細胞の浸潤に関与する種々の接着分子の発現が血管内皮細胞に認められた。 鼻アレルギー患者の鼻粘膜を、in vitroにて抗原により刺激したところ、種々のサイトカイン遺伝子の発現亢進が認められたが、これらサイトカインが接着分子の発現、ひいては炎症細胞の浸潤、活性化に直接関与していると考えられた。
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