研究概要 |
*培養系を用いての検討(in vitroでの鼻粘膜でのサイトカイン発現と薬剤の影響についての検討): 手術にて採取したハウスダスト(HD)鼻アレルギー患者鼻粘膜を細切後、95%O_2下に培養した。12時間後にRNAを抽出し、サイトカイン遺伝子の発現をpolymerase chain reaction法により検討した。HD抗原の接種によりIL-4、IL-5をはじめ、種々のサイトカイン遺伝子の発現亢進が認められたが、トシル酸スプラタストの添加によりIL-5/IFN-γ遺伝子発現比の減少が1μg-ml以上の濃度で認められた。アゼラスチンは10μg/ml以上の濃度では細胞障害性が認められ、1μg/ml以下の濃度ではサイトカイン遺伝子発現への影響は明らかではなかった。 *動物モデルを用いての検討(in vivoでのRSウイルス感染によるサイトカイン産生): BALB/cマウスに、RSウイルスの2種類の糖蛋白(G糖蛋白、F糖蛋白)でprime後に、RSウイルスの経鼻接種を行い、その後の肺、鼻粘膜組織でのRSウイルスの増殖,ならびにサイトカイン産生について検討した。いずれの糖蛋白の免疫にても、その後のRSウイルス接種による肺でのウイルス増殖は、対照とした非免疫マウスに比べ著明に抑制された。一方、鼻粘膜でのウイルス増殖の抑制は免疫群でも明らかではなかった。肺胞洗浄液中のサイトカインは、G糖蛋白でprimeしたマウスではTh2、Th1サイトカインがいずれも高濃度に認められ、一方、F糖蛋白でprimeしたマウスでは、主にTh1サイトカインの高い産生が認められた。鼻腔洗浄液中のサイトカイン産生は低値であった。肺組織にはG糖蛋白でprimeしたマウスでは、好酸球、リンパ球の著しい浸潤が認められた。同じウイルスでも、抗原の違いによりサイトカインの産生パターン、病理変化に著しい差が認められることが明らかになった。
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