鼻の代表的炎症疾患である、慢性副鼻腔炎および鼻アレルギー患者の鼻・副鼻腔粘膜局所でのサイトカインならびに、細胞接着分子の発現について検討を行った。さらに、気道ウイルス感染が、これらの発現に及ぼす影響についても検討した。 1. Polymerase chain reaction法を用いた検討により、慢性副鼻腔炎患者の上顎洞粘膜には、種々のサイトカインや細胞接着分子の遺伝子発現が認められた。IL-1α、IL-1βは特に急性増悪期に発現が認められた。副鼻腔粘膜に存在するT細胞が、このようなサイトカインの発現や、病態形成に重要な役割を果たしていると考えられた。さらに、細胞外マトリックスが、このようなT細胞の持続的活性化に関与していることが示唆された。 2.鼻アレルギー患者の鼻粘膜でのサイトカインについての検討では、特異抗原やサブスタンスPの接種により、種々のサイトカイン遺伝子の発現が認められた。これらのサイトカインは、細胞接着分子の発現を介して細胞浸潤を誘導し、遅発相の発現への関与が示唆された。また、ニューロペプタイドの1つであるサブスタンスPも、免疫調節性サイトカインの発現を介して、アレルギー反応に関与していることが示唆された。 3. Respiratory syncytial virus (RSウイルス)接種により、鼻粘膜でTh-1、Th-2サイトカインも含め種々のサイトカインの発現が認められることが、in vivo、in vitroにおいて確認された。しかし、同じウイルスでもその抗原の違いにより、誘導されるサイトカインは大きく異なった。
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