研究概要 |
平成6年度の研究においては、蝸牛血管条の血流を色素を使わずに観察する方法を試み、研究分担者の田村俊世による画像解析プログラムを用いて蝸牛血流測定を行った。この方法は蝸牛第2回転の骨を内耳を損傷しないように除去し、膜迷路を露出させ、オリンパス実体顕微鏡(SZ6045,TRPT)により直接観察する方法であった。このテクニックはかなり困難であったが、その習熟効果により3匹中2匹において観察が可能であった。しかしながら、画像解析は一応可能であるが、常に一定の条件下で記録いないと画像処理したデータの信頼性に欠けるということが明らかになった。そこで平成7年度の目標として,造影剤を使用して赤血球のコントラストをより一層、鮮明にすることを試みた。螢光色素の赤血球への付着,あるいは色素静注により赤血球のコントラストを増強させることを今回検討したが、これらを用いないで直接観察する方法と比べて、特に優れたデータを得ることができなかった。そこで、造影剤を用いずに実体顕微鏡による直接観察法とレーザドプラ法による血流測定との比較を行った。その結果、ノルアドレナリンを例にとった場合,直接観察法により有意な蝸牛血流の変化を認めるためには大量のノルアドレナリン投与が必要となり、測定感度の点ではレーザドプラ法の方が優れていることが示唆された。しかしながら、直接観察法は、血流状態を総合的に観察できるため、赤血球のコントラストを上げる工夫ができれば、その価値は高いと考える。
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