1.空間識破綻の観察-コリオリ眼球運動の観察 健康成人5名を対象として、120^o/sで回転する椅子上で、5-10秒の一定間隔で頭部運動を行わせた。頭部運動は、直立→前屈→左傾斜→後屈→右傾斜→前屈→直立、前屈→後屈→前屈および右傾斜→左傾斜→右傾斜の3種類を行った。遮眼と明所開眼で行い、頭部に固定した小型CCDビデオ・カメラで左眼を記録した。遮眼では各頭位に固有な回旋性や垂直性など多彩な眼振が数秒間観察された。全例で著しいめまいと不快症状が自覚された。開眼では性状の異なる眼振が持続的に観察され、めまいや不快症状は軽微であった。開眼では脳内に周囲空間が椅子と反対方向に回転する空間識が再現される。一方、遮眼では脳内に周囲空間ではなく、椅子上の空間が再現される。コリオリ刺激により前庭器から加速度情報が脳に投影され、脳内で速度ベクトルと加速度ベクトルの合成が起こる。遮眼と開眼の違いはいずれも、眼球が空間識に忠実に従った結果で説明が可能であった。 2.空間識先鋭化の観察ーレール上起立のトレーニング効果 若年健康成人12名を対象として、毎日30回の起立トレーニングを実施し、起立能力の上達を観察した。レール幅は開眼条件では1.5cm、2.0cm、2.5cm、閉眼条件では3.0cm、4.0cm、5.0cmの各3種類とし、各条件で2名ずつトレーニングを実施した。1回の起立は60秒を満点とし、30回の中15回以上満点となるまで、3カ月を上限として行った。条件を満たした後、1週間隔で計4週起立検査を行い、トレーニング効果の維持を調べた。開眼、閉眼いずれも著しい個体差が観察された。しかし、30回の起立時間の分布の推移には、開眼、閉眼を問わず一定のパターンが見られた。著しい個体差およびパターンの変化は、確率的な足圧中心密度分布およびトレーニングによる非直線的な収束により説明が可能であった。
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