研究概要 |
平成6年度は聴神経腫瘍手術などで顔面神経の中枢側が切断された場合に、最も良く臨床で用いられている舌下神経-顔面神経吻合モデルも作製し、神経の再生時期と程度について電気生理学的および組織学的に検討した。 (方法)成熟モルモットを用いて舌下神経-顔面神経吻合モデル作成し、術後2、4、6ケ月に上眼窩神経を電気刺激し、口論筋から筋電位を導出した。その後、吻合部より末梢の顔面神経を採取し、神経横断切片を作成、トルイジンブルー染色を行い神経線維の数と大きさについて光学顕微鏡と画像解析装置(購入備品)を用いて検討した。 (結果)三叉神経-顔面神経反射は術後2カ月目より検出可能であった。この筋電位は術後4ケ月、6ケ月経過するにつれ、潜時が短縮し振幅も増大した。再生線維は術後2ケ月で術前の約50%,4ケ月で60%,6ケ月で90%の再生を示した。再生線維の大きさも6ケ月ではほぼ術前の大きさにまで回復した。また、8割のモデル動物において切断した顔面神経の中枢端から細い神経束が吻合部に再生していることが明らかになった。 (考察)本研究により舌下神経-顔面神経吻合術は動物モデルにおいては、術後6ケ月でほぼ再生が完了することが明らかになった。また、上眼窩神経を電気刺激し、口論筋から筋電位が導出されたことにより、三叉神経-舌下神経反射も存在することが明らかになった。さらに、吻合部に顔面神経の中枢切断端から再生がみられたことは、顔面神経の再生力の強さを示唆するものと考えられた。次年度は、本モデルにおいて顔面神経核と舌下神経核の神経細胞の再生を検討するとともに、HRPを用いて顔面神経核と舌下神経核との線維連絡につき検討する予定である。
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