微小なディップ型聴力損失(micro-dip)と持続性誘発耳音響放射(C-EOAE)を有する耳の検出率の間に関係があり、C-EOAEが音響に対する内耳の易傷性を表現しているらしいことが示唆されているので、その関係を確かめるために高等学校のクラブ活動の部員の精密聴力検査およびEOAEの測定を行った。C-EOAEの測定には従来の手持ちの誘発電位の記録装置に本補助金により購入したアンプを組み込み、改良を重ねつつデータの解析を行った。1.埼玉県下のS高等学校の協力を得て、剣道部員(15名)、吹奏楽部員(20名)、庭球部員(25名)、茶道部員(20名)の計80名、160耳をを獨協医科大学越谷病院の測定室に順次来院させ、測定を行った。micro-dipのある耳とC-EOAEのある耳の関係はユ-ルの連関係数Qで示すと、剣道部では0.57、吹奏楽部では0.91、茶道部では0.66、庭球部では0.71であり、吹奏楽部員が最も大であった。2.京都府下のK高等学校に出張し、剣道部(15名)、管弦楽部(19名)、庭球部(10名)、蹴球部(11名)の計55名、110耳の測定を行った。ユ-ルの連関係数Qは剣道部、管弦楽部、庭球部、および蹴球部でそれぞれ0.11、0.61、0.33、および0.20であった。3.1)micro-dipとC-EOAEの関係には、以前の中学校における成績と同様に吹奏楽部で強い連関があった。2)micro-dipは茶道部などでもみられ、音響障害の初期像と考えるには問題がある。3)C-EOAEが音響易傷性の予知に役立つかどうかについてはC-EOAEの再現性やmicro-dipとの関係を次年度も引続き追及することが必要である。
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