自記オ-ジオグラム上のディップ型聴力損失(小ディップ)と持続性の(C-)耳音響放射(EOAE)との間に関係があり、C-EOAEが個体差の大きい内耳の易傷性の素因を表現しているらしいという示唆があるので、それを確かめるために高校のクラブ活動部員の聴力検査およびC-EOAEの測定を行った。1)埼玉県下S-D高校の剣道、吹奏楽、庭球、茶道の各部員計80名160耳を来院させ測定を行った。10dB以上の小ディップのある耳の頻度は30〜48%、C-EOAEのある耳の頻度は43〜59%で、両者の間に連関があり、吹奏楽部員ではQ=0.86で連関が最も強かった。茶道部員においても10dB以上の小ディップのある耳の頻度は高かったが、15dB以上の小ディップの耳は1耳のみであった。34名67耳で可能であった追跡調査による小ディップ耳とC-EOAEのある耳の消長は前者の58%が不変であったのに対し、後者は73%が不変であった。2)京都府下K-D高校の剣道、管弦楽、庭球、蹴球の各部員55名110耳の測定を行った。小ディップのある耳の頻度は40〜55%、C-EOAEのある耳の頻度は42〜62%であり、両者の間に連関が認められ、管弦楽部員で最も強く、Q=0.84であった。11名21耳の追跡調査による小ディップ耳とC-EOAEのある耳の消長は前者が不変であったもの67%、後者が76%であった。3) 1kHzの短音刺激によるEOAE波形を今回購入の変換システムを用いてデジタル情報化し、デジムを用いて電話線で伝送することを検討した。EOAE情報の伝送には各刺激に対応する波形ではなく、加算処理後のそれを用いる方がよいことが判った。高校グラブ活動数部の調査において小ディップとC-EOAEの連関は強く、C-EOAEが内耳の音響易傷性に関係があり、素因を表現しているという説に反するものではなかった。15dB以上のディップが音響に関係がある部に多く、C-EOAEは易傷性の予知に役立つ可能性が示された。しかし、10dB=15dBの大きさの小ディップは音響障害の前駆的な所見かどうかについては3年よりも長く音響環境が変化しない対象について検討が必要である。
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