研究概要 |
ヒトの耳下腺腫は、t(6;8)(p21-22;q12)の染色体転座の多数の報告があること並びに、int-3遺伝子を高発現したトランスジェニックマウスにおける耳下腺の腫瘍形成の報告から、ヒトの耳下腺の腫瘍化には、我々がHLAクラスII-III領域間に分離したNotch3遺伝子(マウスのint-3遺伝子のヒトのホモログ遺伝子)の異常または活性化が、関与している可能性が極めて高い。本研究では、悪性耳下腺腫についてこのNotch3遺伝子の変異とその周辺領域の転座や欠失などの異常を分子レベルで解析し、腫瘍化の分子機構を解明することを目的とし、今年度は、まず耳下腺腫患者におけるNotch3遺伝子の発現を解析するため、この遺伝子のcDNAクローンの分離とその周辺領域の構造解析を行った。その結果、ヒトの胎盤のcDNAライブラリーより、3クローンのNotch3cDNAクローンを分離した。これらのcDNAクローンは、3´側から合計4kbの長さを持ち、コスミドクローンとのハイブリダイゼーションや塩基配列の比較から、PEST region,cdc 10 repeats,Transmembrane region,Notch/lin-12 repeatsに相当する領域を有し、EGF-like repeatsの3′側の一部を含むことが明らかになった。Notch3遺伝子は、30kb以上の長さを有し、その転写産物は、6〜7kbと極めて長いことから、この遺伝子のエキソン、イントロン構造を明らかにするために、全長を含むcDNAクローンの分離を試みている。また、Notch3遺伝子の周辺領域の解析から、この遺伝子の5´上流領域にCTGの繰り返し配列を見いだし、HLAホモ接合体B細胞株DNAでは、このCTGの繰り返し配列に4種の多型性が認められた。現在、耳下腺腫の腫瘍組織DNAについて、この繰り返し配列の多型性を検討している。
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