研究課題
癒着性中耳炎の成因の解明のため主として以下の実験を行った。中耳腔のガス換気能:癒着性中耳炎の術後耳の中耳圧と中耳腔のガス換気能を観察した。鼓室形成術及び換気チューブ挿入術を施行した癒着性中耳炎の症例を対象とした。中耳含気腔圧の変化について、チューブ留置直後、1年、2年と経時的に変化を追ってみると、中耳粘膜の改善とともに、圧の上昇傾向が認められ、中耳腔におけるガスの換気能が回復してくることを示された。しかし鼓室腔の粘膜を殆ど除去し骨面が大きく露出した症例では、粘膜の上皮化が遅延するため、圧があがりにくい傾向にあった。耳管機能:鼓膜癒着症は耳管機能不全が関与していると考えられているが、その実態は不明な点が多い。今回は鼓膜癒着症の手術症例の耳管機能について、音響法を中心に検討した。術前後の検討で、多くの症例は音響法陽性を呈した。耳管開閉持続時間に関しては100msec以後から6000msecまでばらつきがみられ、術前後の比較でも明らかな傾向はみられなかった。術後の鼓膜再陥凹例の中には、術前の耳管機能で狭小型を示す症例も認められたが、正常型でも術後に再陥凹を示す症例も認められた。このように現段階で術前の耳管機能で術後経過の正確な予想は難しいと考えられるため、術中、移植筋膜に換気チューブを挿入し再陥凹、再癒着の予防に努めている。
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