研究概要 |
中耳炎症病態の難治化因子について、昨年度と同様に中耳腔上皮を中心とした形態的、機能的研究を行った。 方法:1.昨年度と同様に難治な小児滲出性中耳炎例について、鼓膜チューブ留置時に鼓室岬部の粘膜(1×1mm)を採取し、過去の分類基準と同様に光学顕微鏡下に検討を加えた。2.含気腔のガス産生能および含気容積の計測、含気腔中の酸素分圧については、鼓膜チューブ留置後、1週,1カ月,3カ月,6カ月、1年,1.5年の時点で、経外耳道的にマノメーターと酸素センサーを接続して外耳道を閉鎖し、酸素濃度と中耳腔の経時的圧変化を計測し、昨年度と同様の方法で中耳含気腔の容積を計測した。3.鼓膜チューブ留置術後1年目、2年目の定期検査時に撮影した側頭骨シュラー位レ線フィルムを用いて、レ線上での蜂巣の再発育度を検討した。上記検査は保護者の承諾を得た上で行った。4.また計測時に外耳道を密封閉鎖することから、閉鎖時の残存外耳道温度の変化について、健康成人20例(ボランティア)を用いて計測した。 結果:本年度は新規症例13例の症例を対象に上記検査を行い、このうち中耳粘膜の組織学的検索の可能であった症例は4例であった。また昨年度の症例(23例)についても、継続してほぼ半年毎に同様の計測を繰り返した。含気腔内の酸素分圧計測は4耳で行い得たが、症例が少なく有意差は観察されなかった。外耳道閉鎖に伴う外耳道内の変化は温度変化ほとんど認められなかった。チューブ留置後の含気腔容積の変化から、含気腔内の粘膜腫脹は2〜3カ月で消失するが、含気腔圧の上昇傾向の回復には1年半以上の長期間を要することが判明した。さらにこの圧上昇傾向の回復には粘膜病変度が明らかに関与し、高度粘膜病変例では1年半を経過しても含気腔圧の上昇が観察されなかった。含気腔圧は中耳粘膜の状態を示した指標と考えられた。
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