研究概要 |
鼻アレルギー発症機序において肥満細胞は重要であることは云うまでもない。最近この肥満細胞は局所の構築細胞である線維芽細胞膜表面に発現するc-kit ligand (SCF)によって発育することが明らかとなっている。ヒトの肥満細胞は中性蛋白分解酵素としてトリプテ-スのみを持つもの(MC-T)と,トリプテ-スとカイメ-スを持つ(MC-TC)2つの亜型に分類されている。今日まで、鼻粘膜上皮内に増多するMC-Tが鼻アレルギー発症機序の上で重要であることを我々のグループは唱えてきた。この肥満細胞の増多にとって局所での増殖因子が関与する必然性が生じるが、鼻粘膜上皮層においてはたしてこの増殖因子が存在するか否か興味がある。 平成6年度において免疫組織化学的検討した結果、SCF陽性染色性が上皮層、および粘膜結合識、粘膜固有層浸潤細胞に見られた。次いで鼻粘膜上皮擦過片を培養し、得られた培養液中からはヒト肥満細胞増殖因子であるSCFが増加することを見出した。平成7年度においてこのSCFは上皮細胞由来であるか否か,そしてSCFは鼻アレルギーにおいて産生が亢進するか否かを検討した。すなわち、鼻アレルギー患者またはアレルギーを持たない肥厚性鼻炎患者の下鼻甲介粘膜からプロテアーゼ処理により上皮層を分離し、これを培養することにより分離培養上皮細胞を得た。この分離上皮細胞から全RNAを分離し、逆転写酵素によるPCR法によってcDNAを得た。そしてSCFcDNAに対応するプライマーを用いて、PCR法によって増幅した。この結果上皮細胞からはSCFcDNAが大量に産生され、SCFmRNAの発現が証明された。また分離培養上皮細胞からSCFの産生をみるため、培養上清液中のSCF量をELISA法により測定した。この結果分離上皮細胞から培養7日まで産生の増加が見られた。またこのSCF産生が非アレルギーより鼻アレルギーに増加する傾向がみられた。
|