研究概要 |
鼻過敏症と鼻茸症の病態形成において、一連の反応である局所血流障害、虚血-再潅流障害、活性酸素とNOラジカルによる粘膜組織障害の関与の検討を行っている。さらに鼻粘膜血流の制御における血管内皮細胞および遠心神経由来の一酸化窒素(nitric oxide、以下NO)の関与を検討し、従来考えられていた血流増加に伴う鼻閉と異なり、実際には大半の症例があてはまるとおもわれる、炎症に伴う血流障害が原因となる鼻閉発現の機序を明らかにし,その治療法を検討する.平成6年度には,すでに確立したヒト鼻粘膜血管内皮細胞の単離培養細胞のCa2+蛍光色素プローブ法による細胞内Ca2+動態測定技術を確立した.そして,ヒスタミン刺激によって細胞内Ca2+が濃度依存的に上昇し,この応答がヒスタミンH_1レセプターを介している事を明らかにした.さらに,PAFは10^<-12>Mの低濃度ですでに細胞内Ca2+濃度を上昇させること、ロイコトルエンやトロンボキサンに関しても同様の作用があることを証明した.一方,鼻粘膜組織中のSOD活性,過酸化脂質,NOS活性の検討も平行して行った。SOD活性は,鼻アレルギー症例(RA)及び慢性副鼻腔炎症例(CS)ともに,正常粘膜症例に較べ有意な増加を示していたが,RAとCSの間に有意差はなかった.過酸化脂質量もRA=CS>正常例であった.NOS活性の測定技術は現時点では再現性に乏しく,評価できる結果を得ていない.NOそのものの定量には電極法によるNO-501を用いることを予定していたがノイズが大きすぎ,この方法に代わって,化学発光法による組織内NO測定装置NO-Analyzer,model FES-450をもちいており,ヒト鼻粘膜血管内皮単離培養細胞に関しては,安定した結果を得ている.現在,本法と細胞内Ca2+動態の同時測定の実験系の確立を検討している.
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