研究概要 |
免疫反応の結果生じるさまざまな活性物質が内耳感覚細胞に何らかの影響を及ぼすと考えられる。平成6年度にはICRマウスならびにモルモットの単離蝸牛有毛細胞にインターロイキン(1α、2、6)やヒスタミンを負荷し細胞内カルシウムイオン([Ca^<2+>]i)の変化をカルシウム依存性蛍光色素(Fura-2)を用いて観察した結果、内部動員、外部動員とによって[Ca^<2+>]iが上昇し、それぞれのレセプターの存在が示唆された。また[Ca^<2+>]iの持続的増加は逆に細胞障害性に働く可能性があり免疫反応による内耳機能障害の一要因となることが推測された。平成7年度はモルモットの単離前庭有毛細胞について同様に[Ca^<2+>]iの変化を観察した結果、インターロイキン(1α、2)、ヒスタミン、PAFを負荷後、[Ca^<2+>]iの上昇がみられ細胞外液のCa^<2+>を除くとその反応はみられなかった。一方プロメタジン(H1アンタゴニスト),シメチジン(H2アンタゴニスト),チオペラミド(H3アンタゴニスト)の存在下で[Ca^<2+>]iの上昇がブロツクされたことより前庭感覚細胞に各レセプターが存在することが示唆された。また免疫異常下で各種の免疫活性物質が前庭系の求心性情報伝達に何らかの影響を及ぼすことが推察された。なお血管条、内リンパ嚢上皮については、細胞単離ならびに同定が難しいこと、また細胞膜電位測定については諸種の設定条件が難しいことより今回データを出すには至らなかった。
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