ベーチェット病患者由来Streptococcus sanguisから菌体DNAを抽出し、制限酵素で切断ののちλgt11ベクターにクローニングし、ライブラリーを作成した。このライブラリーより患者血清を一次抗体、抗ヒトIgGおよびIgM抗体を二次抗体とするイムノスクリーニングを行い陽性クローンを得た。このDNAは約1.5kbpの大きさであり、Western blot法によりDNAの発現する蛋白は分子量33-35kDaであった。そこでこの得られたDNAの塩基配列の同定を試みた。まず単離したDNAのサブクローニングを行い、λgt11ベクターに入った菌体由来DNAを増幅後、EcoRIで切り出し、プラスミドpUC118に挿入した。この後、プライマー伸長法により、全塩基配列を決定した。その結果、1.5kbpの塩基配列の中にATGで始まるふたつのopen reading flame(ORF)と考えられる部分が存在しており、それぞれ590bpと950bpの大きさであった。Western blot法より抗原蛋白は分子量33kDa以上であったが、後者のORFはそのアミノ酸配列から推定して約34kDaの蛋白をコードしていると考えられ、また、16b上流にShine-Dalgarno配列を有していることから、後者のORFが抗原蛋白を発現している可能性が高いと考えられる。このORFはストップコドンを持たないままプラスミドのDNAに移行しており、ライブラリー作成時に使用したEcoRIで下流部分が切断されていると考えられた。すなわち菌体の中ではもっと大きなORFからなっており、もっと大きな蛋白が抗原として働いている可能性がある。そこで今後はさらに下流領域を調べるため、菌体DNAをEcoRI以外の制限酵素で切断してDNAライブラリーを作成し、これまでにわかっている配列を元にして作った標識プローブを用いてスクリーニングを行っている。さらにこの抗原をベーチェット病患者リンパ球との反応を中心にエピトープレベルで解析する予定である。
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