研究概要 |
顔面部の血管を支配する神経として交感神経による血管収縮,副交感神経による血管拡張,感覚神経による逆伝導性血管拡張が知られている。本研課題での眼の血管ことに脈絡膜の血管の神経支配については,交感神経の支配に関する報告はあるが,副交感神経性,及び感覚神経性の血管拡張の報告が殆どないためにその存在の有無を中心に実験を行った。実験はネコ(30匹)をネンブタールで麻酔し,眼窩上部の骨を一部切除した後に,レーザードプラー血流計を用いて経強膜的に脈絡膜血流を測定した。神経の刺激は外側短毛様体神経を電気刺激(0-50V,2ms,20Hz,10s)し,それによる脈絡膜血流の反応を観察した。交感神経α受容体遮断剤であるフェントラミン(3mg/kg)を前もって投与しておくと,外側短毛様体神経刺激により血管拡張反応が得られた。ポリモダールC線維に感受性を持つ1%カプサイシンを神経の眼球近く(P点)に塗布すると,持続性の血管拡張反応が観察できたが、毛様体神経節と副毛体様神経節の間(Q点)に塗布した場合は,反応が生じなかった。又,神経のP点あるいはQ点の電気刺激によって生ずる血管拡張反応は,もとにヘキサメソニュウムに感受性を持たなかった。P点刺激による反応はカプサイシンに感受性を持ちほぼ半分になるが,Q点刺激の反応では影響を受けなかった。以上の結果から脈絡膜血流を支配する神経の働きによる血管拡張反応にはカプサイシン感受性の血管拡張反応と,カプサイシン非感受性の血管拡張反応との二種類があり,前者は感覚神経の逆伝導性興奮により,後者は副交感神経の血管拡張線維によって生ずると考えられた。
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