研究概要 |
前年度の研究から、リピッドAにより惹起されるエンドトキシン起因性ぶどう膜炎(EIU)では、LPSで惹起されるEIUと比較検討すると、より多数の炎症細胞が前房内に見られることを見いだした。 今年度はその機序についてCINC familyに焦点をあてて検討した。動物はルイスラット、7から9週齢の雄を用いた。ぶどう膜炎の起炎原として、Escherichia coliのLPSと合成リピッドAを用いた。LPSまたはリピッドAを注射後、経時的に血清および前房水を採取し、CINC family(CINC1,CINC2 αLpha,beta,CINC3)の量をELISAキットを用いて測定した。ボイデンチャンバーを用いて、それぞれの前房水が多核白血球に対し遊走能を持つか否かを検討した。またリピッドA注射ラットにCINC1を静脈内注射して、その前房内炎症に及ぼす影響を調べた。その結果、CINC familyは、前房中ではCINC1とCINC3が検出され、いづれのモデルでも24時間で最大となったが、その量はLPS注射ラットのほうが多かった。血清中においてもCINC1とCINC3が検出されたが、いづれのモデルでもその値は6時間で最大となり、その量はLPSラットのほうが約10倍高かった。前房水の白血球遊走能を調べると、LPS注射ラットの方が活性が高かった。リピッドA注射ラットにCINC1を静脈内投与すると前房内炎症細胞数が容量依存的に減少した。 以上の結果から、LPSまたはピッドAの注射によりCINC familyが産生され、これが前房局所への細胞遊走に重要な役割を持つことが示唆された。また、LPS注射ラットではLPS注射により、全身的に過剰なCINC1が産生され、それが、前房内への細胞の遊走に抑制的に働いている可能性があると考えられた。
|