1、正常ラットへのマウス網膜の移植 1)異種間網膜細胞移植における拒絶反応の状態、およびこれに対する免疫抑制剤(タクロリムス)の効果を確認するために、幼若なマウス(C57BL/6)の網膜を正常ラット(SD)の網膜下腔に移植し、組織学的検討を行った。 2)移植術後に免疫抑制剤を使用しない群では、全例で強い拒絶反応が認められ、移植されたマウス網膜の生着は観察されなかった。 3)移植後2週間にわたりタクロリムスを連日腹腔内に投与した群では、術後4週間で60%に移植細胞の生着が観察され、免疫抑制剤の投与が移植網膜細胞の生存率の向上に有用であることが確認された。 4)しかし移植細胞からの視細胞外節の成長が確認されたのは2例にすぎず、また全例でマクロファージの遊走が認められた。したがって免疫抑制剤を投与しても、異種間視細胞移植では、過去に報告されている同種間移植のような良好な結果を得るのは難しいと考えられる。 2、RCSラットへのマウス網膜の移植 1)網膜色素上皮細胞(RPE)に遺伝的機能障害のあるRCSラットの網膜下腔に、1と同様の手法により幼若マウス網膜を移植、術後に免疫抑制剤を投与して、組織学的検討を行った。 2)術後4週間の段階で移植細胞の生着が確認されたのは10%以下にとどまり、ホストのRPEの機能不全が移植細胞の生着を著しく阻害していることが示された、視細胞単独ではなく、RPEの同時移植の必要性が示唆された。
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