前年度の研究では、レボフロキサシンの経口投与後の眼内動態および摘出眼杯網膜電図(ERG)を用いたレボフロキサシンの眼毒性について検討した。今年度はレボフロキサシン硝子体内注入のウサギ網膜に及ぼす影響を電気生理学的および組織学的に検討した。レボフロキサシン200または500μgの硝子体内注入では白色、有色ウサギともにERG各波に変化はみられなかったが、1000または2000μgの硝子体内注入では一過性に律動様小波振幅の低下がみられた。視覚誘発電位および組織学的検討ではいずれの注入量においても変化はみられなかった。.レボフロキサシン200または500μgの硝子体内注入はウサギ網膜に明らかな影響を与えないことが示された。 そこでレボフロキサシン500μg硝子体内注入後の眼内動態について検討した。注入後のレボフロキサシンの硝子体内濃度は有色および白色ウサギともに同様な動態を示し、主要な細菌性眼内炎の起因菌のMIC_<90>を少なくとも24時間は凌駕する。その他のメラニン非含有組織内のレボフロキサシン濃度は、白色ウサギと有色ウサギとの間に有意な差はみられなかった。虹彩毛様体および網膜色素上皮・脈絡膜のメラニン含有眼組織内では、レボフロキサシン濃度は有色ウサギでは白色ウサギに比し測定したいずれの時点でも有意に高く、1週間後における有色ウサギの網膜色素上皮・脈絡膜には10μg/g以上のレボフロキサシンが検出された。レボフロキサシンがメラニン含有眼組織内に高濃度に移行し蓄積することが明らかになった。
|