本研究では杆体錘体干渉現象suppressive rod-cone interaction(SRCI)を完全型、不全型停止性液盲症(CSNB)、高度近視眼で検討した。完全型CSNBでは1例を除き正常なSRCIが観察された。SRCIが異常を示した症例では視野上に正常なSRCIが記録された点と異常であった点が混在していた。不全型CSNBでも1例を除き正常なSRCIが観察された。SRCIが異常な症例では完全型と同様に視野上に正常なSRCIが記録された点と異常であった点が混在していた。高度近視では局所的に正常なSRCIが観察される部分とSRCIが異常な部分が混在していた。完全型CSNBでは近視を合併することが多いため、この疾患でみられたSRCIの異常は近視による可能性が考えられる。不全型では近視の合併がないため、この疾患でみられたSRCIの局所的異常に関してはさらに検討を要する。SRCIは水平細胞を介して暗順応した杆体が錘体を抑制する現象であり、高度近視のように眼球の変形などにより網膜の形態が変化を受ける疾患では、網膜内を水平方向に延びた水平細胞のaxonが変成しSRCIが異常となると考えられる。したがって完全型CSNBの一症例でみられたSRCIの異常は完全型CSNB自体によるものではなく、近視の合併により二次的に生じたものであると考えた。最近の研究では、完全型CSNBではphotopic ERCの波形からon型双極細胞に機能不全があるとされているが、水平細胞とon型双極細胞では情報伝達に用いるtransmitterが異なるため、この疾患では杆体感度が低下するにも拘らずSRCIが正常に保存されていると思われる。不全型の病態に関してはさらに検討を行う予定である。
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