研究概要 |
1,神経修飾物質の一つであるドーパミンは硝子体腔中に注入することにより、ON,OFF反応に順応状態に関係して影響を与え、パターンERG(PERG)の空間周波数応答を修飾することが見いだされた。 2,Glutamic acid類似物質の一つで、AMPA/KA受容体に働くKainic acid (KA)を片眼の硝子体腔に注入して飼育すると眼軸長の延長と、近視化が有意に見られ、代謝型受容体に働く2-amino-4-phosphonobutyrate(APB)を注入して飼育すると眼軸長の短縮と遠視化が有意に見られた。ERGでは、KA注入眼ではON反応およびOFF反応が同程度に減弱し、APB注入眼ではON反応が特異的に抑制されることが見いだれた。これらの事実から、ONおよびOFF反応に関係する網膜内情報伝達系が、近視化に関与していることが示唆された。 PERGはKA注入眼では中〜高空間周波数領域での振幅低下があり、APB注入眼では全空間周波数域での振幅低下が見られた。半透明の遮閉膜を負荷した場合および遮閉を解除した直後の遮閉眼のPERGでは中〜高空間周波数領域での振幅低下が認められた。これらの事実から、網膜像のボケに伴う中〜高空間周波数領域でのコントラスト感度の低下、あるいは網膜の情報処理系における中から高空間周波数領域の応答の低下が近視化と関係することが示唆された。これに対して低空間周波領域の応答の低下が存在する場合は近視化の機転が働かないことが予想された。
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