増殖性硝子対網膜症の発症における細胞増殖因子の関与を平成5年度に引き続いて検討した。培養ラット網膜色素上皮および培養ラット網膜グリア細胞を用いて、増殖因子が細胞と細胞外マトリックスに与える影響を検討し、それらの関係を抑制する薬剤についても合わせて検討した。網膜色素上皮や網膜グリア細胞が細胞外マトリックスに結合し、収縮することは増殖性硝子体網膜症の発症の重要な一段落であるが、transforming growth factor-β(TGFβ)と炎症性サイトカインのひとつであるインターロイキン6がラット網膜グリア細胞およびラット網膜色素上皮細胞のフィブロネンチンおよびコラーゲンへの接着を濃度依存性に促進することも明らかにした。これはTGFβなどの細胞増殖因子やサイトカインが細胞外マトリックス産成促進だけではなく、細胞と細胞外マトリックスの接着促進を通じて、増殖性硝子体網膜症の発症に深く関与していることを示唆するものである。培養ラット網膜色素上皮および培養ラット網膜グリア細胞によるフィブロネクチン産成をTGFβが促進することを平成5年度の研究で明らかにしたが、実際の治療に役立つ薬剤を検討するためにTGFβによって促進されたフィブロネクチン産成を抑制する物質を検討した。種々の薬剤を検討した結果、ビタミンAの誘導体のひとつであるretinoic acidがTGFβによって促進されたフィブロネクチン産成を濃度依存性に抑制することを見いだした。このことから増殖性硝子体網膜症の発症を抑制する可能性のある薬剤としてビタミンAが有望であること考えられる。
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