外眼筋手術の前部ブドウ膜に対する循環の影響を検討するために、白色ウサギ10羽を対象に外眼筋を切腱することにより前毛様血管(外眼筋血管)を障害させ、一定期間ののち前眼部血管の樹脂鋳型標本を作成して走査型顕微鏡で前眼部の虚血の徴候をしめす角膜の新生血管の有無を観察した。さらに長後毛様動脈を閉塞させ、この2種類の手術モデルによる前眼部虚血への影響を比較した。 外眼筋切腱における術後5日目のモデルでは虹彩の毛細血管網の著しい減少がみられたが角膜には新生血管は観察されなかった。しかし術後2週では虹彩毛細血管網の再形成と角膜輪部に血管新生の徴候がみられ、7週では上方の角膜輪部血管網からの著しい新生血管が認められた。他方、長後毛様動脈の閉塞モデルではすでに術後2週の時点で全周の角膜輪部からの著しい新生血管が観察できた。 この結果は前毛様血管(外眼筋血管)の前眼部ブドウ膜の循環に対する影響は少ないとする従来の説、つまりウサギでは前眼部のブドウ膜の循環はほとんどが長後毛様動脈で供給されるという報告と異なることを示しており、ヒトやサルで観察されるようにウサギにあっても前毛様血管は少なからず前眼部の循環に関与することを示しており、この血管の循環障害への影響は徐々に進行するものと推察される。
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