研究概要 |
近見反応三要素を同時に測定する機械を開発し,これを眼科臨床に応用することを目的とした.装置の原理としては画像解析法を使用した.輻輳機能の異常は,核上性の器質的異常による輻輳麻痺のみならず,屈折や調節機能と関連した輻輳不全,調節性内斜視などのAC/A異常が良く知られている.これらの輻輳機能は,臨床的にはプリズムカバーテスト(PCT)や自覚的検査を利用した眼位の測定により調べられているが原理的に装置上の問題があった.前眼部の赤外線画像から瞳孔中心,瞳孔径,角膜反射像位置を解析し,さらにナイフエッジ法を利用して眼底からの反射像から調節を求める予定であった.このうち,瞳孔径,角膜反射像位置の解析は画像取り込みボードとパーソナルコンピュータで実現できた.両眼の前眼部とプルキン工像をTVカメラにより同時に捕捉し,瞳孔中心と角膜反射像の位置関係から画像解析により両眼眼球運動を連続的に計測する装置を作成した.残るナイフエッジ法を利用した調節の測定は,眼球光学系の収差の影響か,理論どおりには解析が困難であった.そのため,スタティックな測定になってしまうが,トプコン製のビデオレフラクションユニットを利用した. これらの装置により,一点固視状態での輻輳・調節・瞳孔の動揺を各視距離にて,両眼同時に調べた.このために,片眼の視覚刺激を遮断しつつ,測定光を透過させる赤外フィルターと赤外反射可視透過のダイクロイックミラーを用いた視標提示装置を用意した.つぎに近見負荷を与えた後,近見反応が消滅するのにどのくらい時間がかかるかを測定した.この結果,本装置は近見反応の基礎的なデータであるAC/AS・AC/ARの他覚的測定とその臨床応用,近見負荷の調節に及ぼす影響の測定,輻輳順応の測定とその臨床応用等の用途に十分な機能を持つことがわかった.
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