角膜実質細胞をコラーゲンゲルに包埋し、10%ウシ胎児血清存在下で培養すると、培養時間に比例してコラーゲンゲル直径の収縮を認めた。さらに、角膜上皮細胞培養上清の添加によって実質細胞によるコラーゲンゲル収縮は促進された。角膜上皮細胞培養上清をアセトン処理すると、アセトン濃度70%で析出される不溶性分画に、実質細胞によるコラーゲンゲル収縮活性に対する促進効果を認めた。次に、得られたアセトン不溶分画をヘパリンセファロースカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製すると、NaCl濃度400mM付近で溶出されるヘパリン親和性分画が実質細胞のコラーゲンゲル収縮を促進させることが認められた。さらに、この分画をc-18カラムを用いた逆相クロマトグラフィーにて分離精製した。この結果、アセトニトリル52%付近で溶出される分画に実質細胞によるコラーゲンゲル収縮を促進する作用が認められた。さらに、この分画に含まれる蛋白質のアミノ酸配列を検討しN末端から13個までのアミノ酸配列を決定した。そのアミノ酸配列とすでに報告されている蛋白質のアミノ酸配列との比較検討を行ったところ、基底膜成分の一つであるヒトおよびウサギのSPARC(Secreted Protein that is Acidic and Rich in Cystein)のアミノ酸配列と高い相同性が認められた。現在、我々の分離精製した角膜実質細胞によるコラーゲンゲル収縮促進因子がSPARCと同一であるかを検討中である。
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