平成6年度の研究課題は重度視覚障害者(児)について、1.残存視機能による固視運動の評価、2.継続実態調査を行う事であった。以下にその成果の概要を記す。 1.重度視覚障害者(児)の残存視機能による固視運動の評価:残存視機能を利用出来るいわゆるロ-ビジョン者には、弱視レンズ、単眼鏡や拡大読書器などの視覚的補助具の利用を勧めているが、これらの適切な使用法を、主として拡大読書器使用時の固視運動の面から検討した。低視力者の固視運動の基本的パターンは青眼者と差はないが、読み(停留)の回数が多くなり、視運動眼振が眼精疲労の原因になることから、患者個人個人に応じた指導が必要である。また、視野障害者の場合は、視野幅20°未満では読書距離の延長と読書時間の延長および視運動眼振の増加を来たすことが示され、それを考慮した拡大読書器の改良と使用法の指導が必要である。なお、歩行時の眼球運動はさまざまなパターンを示すため、次年度に成績をまとめたい。 重度視覚障害者(児)の継続実態調査:昨年度の調査で、川崎医科大学付属病院眼科外来に受診するすべての患者の内、約2.9%が身体障害者に相当あるいは将来相当するだろうと推定されたことにより、これらの障害者の日常生活や勤務状況、家庭環境や本人自身および周囲の希望や問題点を聴取し、高齢者ほど家庭内で孤立した生活を強いられて、その多くが眼科リハ・クリニックを望んでいることが明らかとなった。そこで、眼科リハ講演会を平成6年10月23日(日)に開催し、自立の問題と盲導犬について理解を深めてもらった。さらに、1993年4月に開設した川崎医科大学付属病院眼科外来での眼科リハ・クリニックにおいて指導した18例の具体的指導内容について平成6年11月5日に第48回日本臨床眼科学会(千葉、幕張)にて報告した。
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