研究概要 |
神経芽腫はマス・スクリーニングにより早期例が多くなったとはいえ、未だN-myc増幅を伴うような悪性度の高い例も存在する。本邦では現在A1プロトコールにより進行例の治療を行っているが、難治例のことも多い。新たな薬剤の開発が期待される。トポイソメラーゼI阻害剤であり、植物アルカロイドの一種であるカンプトテシンの誘導体であるCPT-11の神経芽腫に対する抗腫瘍効果について検討した。また薬剤耐性因子との関連についても検討した。 1.神経芽腫細胞株の制癌剤感受性(MTT assay):各種制癌剤に対する感受性は、adriamycin 7/7(100%),vincristin 1/7(14%),etoposid 3/7(43%),CPT-11(SN-38)6/7(86%)であった。2.CPT-11(SN-38)に対する制癌剤感受性:SN-38に対する感受性は、100と10μg/mlの濃度では7株中6株に有効であった。1μg/mlでは7株中3株に有効であった。3.P-糖蛋白染色:P-糖蛋白染色は4/7株で(+)であった。3/7株では(±)であった。MTT assayとの関連では、SK-N-DZはSN-38に対し感受性がなく、P-糖蛋の発現は陽性であった。しかしSK-N-AS,SK-N-BE,GOTO株などではP-糖蛋の発現がみられるにも関わらずSN-38に対し感受性が見られ、両者の関連は明らかでなかった。4.GST-π染色:GST-π染色では、すべての標本で、大部分の細胞が陽性に染色されていた。またMTT assayによるSN-38の感受性の結果とGST-π染色の結果は相関がみられなかった。 以上の研究結果よりカンプトテシンは神経芽腫に対して抗腫瘍効果が有ることが分かった。また、adriamycinなどの薬剤耐性に関連するmdr-1遺伝子の関連蛋白であるP-糖蛋の発現とSN-38に対する感受性について検討したが、関連は見られなかった。またCDDPの薬剤耐性に関連するGST-πの発現はすべての細胞で陽性であったが、SN-38には感受性がみとめられた。このことより、カンプトテシン誘導体は耐性因子発現例でも有効であることが判明し、今後の臨床応用が期待された。
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