研究概要 |
目的:神経芽腫では染色体異常として一番染色体短腕の欠失が報告され、この領域に神経芽腫の癌抑制遺伝子が存在する可能性が指摘されてきた。神経芽腫の癌抑制遺伝子としてNO3遺伝子が一候補となり得るかどうか検討する。 材料及び方法:ヒト神経芽腫細胞株IMR32,NB1,NB69,RT-BM-1,SK-N-SH,TGWの6株より抽出したDNAおよびtotal RNAおよび神経芽腫の患児26例の腫瘍DNA、健常成人18例と神経芽腫患児1例の血液DNAを用い以下の検索を行なった。 1)Southern blot法で神経芽腫のgenome内におけるNO3遺伝子のgross alterationの解析 2)Northern blot法で神経芽腫におけるNO3遺伝子の発現量を定量する。 結果:Southern blotのヒト神経芽腫細胞株においてはNO3遺伝子の構造異常は検出されなかった。Northern blotではIMR32およびTGWでNO3遺伝子発現の消失ならびに著名な減少を認めた。NO3遺伝子発現が観察された4株は、レチノイン酸やdbcAMPで分化することが報告されており、NO3遺伝子発現と神経分化の関連の可能性が示唆された。神経芽腫患児26例より抽出した腫瘍DNAをSouthern blotしたところ、3例に異常バンドを検出した。これら異常バンドは、健常成人18例および患児の血液DNAを用いた解析では検出されないことより、腫瘍に特異的に生じたDNA変異に由来することが示された。 以上の結果は、神経芽腫において、NO3遺伝子が何らかの構造異常により不活化されている可能性を示すものであり、NO3遺伝子は神経芽腫の癌抑制遺伝子の有力な候補であると思われた。
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