研究概要 |
目的:我々は昨年までの解析で、DAN遺伝子(旧称N03遺伝子)がヒト一番染色体短腕に座位し神経芽腫の染色体共通欠失領域内に存在する遺伝子であること、一部の神経芽腫細胞株で発現抑制を受けていること、神経芽腫腫瘍DNAにおいて構造異常を受けていることを見いだし、DANは神経芽腫のがん抑制遺伝子の有力な候補遺伝子であることを報告してきた。これまでの知見ではDAN遺伝子産物の腫瘍抑制効果はラット培養細胞系で認められているがヒト培養細胞での検討はなされていない。そこでDAN遺伝子産物が神経芽腫細胞株に及ぼす効果を解析することを目的として今年度の研究を行った。 材料および方法:細胞株としてDAN遺伝子発現のほとんど認められないヒト神経芽腫細胞株TGWを用いた。DAN遺伝子発現ベクターとしてヒトメタロチオネイン遺伝子のプロモーターの下流にヒトDANcDNAを組み込んだものを用いた。このベクターはZn^<2+>,Cd^<2+>など重金属イオンの存在下で遺伝子発現が増強される特徴をもっている。対照としてDANcDNAを組み込まないベクター単独を導入した。ベクターの細胞への導入は電気穿孔法で行い、G418 400μg/ml存在下で導入されたクローンの選択を行った。親株、DANcDNA発現クローン、対照クローンについて細胞形態、増殖能、軟寒天培地におけるコロニー形成能につき解析した。Zn^<2+>イオン存在下でDAN遺伝子発現の誘導を行いN‐myc遺伝子の発現に及ぼす効果につき検討した。 結果:1.外来DANcDNAを発現する数個のクローンを単離することができた。しかし、その発現量はいずれもラット正常線維芽細胞のレベルに達しなかった。またZn^<2+>イオンによるDAN遺伝子発現の増強は1.5-1.7倍であった。2.親株、DANcDNA発現クローン、対照クローン間では細胞形態、増殖能、コロニー形成能に顕著な差は認められなかった。3.DAN遺伝子発現量の変化にともなうN‐myc遺伝子発現の変動は認められなかった。
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