本研究の実施計画に沿い、検体となる肝移植時摘出全肝組織の採取、通常病理標本の検索、凍結保存と、型別コラーゲンおよびその関連物質に対するモノクロナール抗体の作成に努めてきた。検体数は53となっている。この肝組織の通常病理組織標本の検討では以下のようなことが明らかとなっている。 1.20%の症例で肝臓の一部の肥大あるいは萎縮がみられた。肥大部位としては尾状葉が多く、この部の特異性が考えられる。2.肝内門脈域の線維化は年令により変化し、1歳以下では細胞浸潤と胆管増生が著明であるが、6才以上になると細胞成分の乏しい密な繊維組織となっていた。3.黄疸が無いかごく軽度の症例でも組織学的には線維化が相当進んでいる所見がみられた。4.胆道閉鎖症後の硬変肝に成人型肝癌が発症している症例が1例みられた。 また、開始された免疫組織化学染色では、肝内胆汁鬱滞症の肝線維化は胆道閉鎖症に比べ進行が緩徐であることが示された。 以上から、肝線維化の、部位別、疾患別、年齢別に差が多様にあることが確認された。型別コラーゲンに対するモノクロナール抗体の作成に時間を要したため、実際の検索の開始が遅れたが、今後も当初の実施計画に沿い、線維化活性の局在検索のため免疫組織化学、in-situ hybridizationを実行して、肝線維化の機構の解明に務める方針である。
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