週令120-130日の妊娠羊4頭に帝王切開を行い、その胎仔に無呼吸下に送脱血管を総頚動脈、内頚静脈に挿入後、各2頭にそれぞれ定常流及び拍動流VA-ECMOを100ml/kg/min.の流量にて6時間行った。尚、胎仔の心拍数が150/分以上となることが多いため、拍動流ECMOは心拍数2に対し拍動1の割合で行った。心拍数、動脈圧、中心静脈圧、心拍出量、腎血流量、腎組織血流量をモニターしながら、経時的に各部位に採血を行った。拍動流ECMO実験群では定常流ECMO実験群に比し動脈圧、心拍出量、腎血流量、腎組織血流量の増加を認めた。実験開始3時間後より一酸化窒素阻害剤であるL-NMMAを投与したが、両群とも一時的な動脈圧の上昇、心拍出量・腎血流量及び腎組織血流量の持続的低下を認めた。血漿中アドレナリン値には両群間に差を認めなかったが、ノルアドレナリン値は定常流ECMO実験群で高値を示した。またL-NMMA投与直後でカテコーラミン値に変動はみられなかったが、両群とも経時的にノルアドレナリン値は上昇を示した。ECMO終了後に動物を犠死せしめ、頭蓋内出血の有無を検索したところ、明らかな出血を認めなかった。以上の結果により、胎児VA-ECMOにおける拍動流ECMOの有用性が示され、無呼吸状態の胎児の呼吸循環状態の維持に十分な役割を果たすものと思われた。また胎児期の循環においても一酸化窒素(NO)系が生理的に重要な役割を果たしていることが示された。
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