週令120-130日の妊娠羊8頭に帝王切開を行い、その胎仔に無呼吸下に送脱血管を総頚動脈、内頚静脈に挿入後、各4頭にそれぞれ定常流(定常群)及び拍動流VA-ECMO(拍動群)を100ml/kg/min.の流量にて60分行った後、L-NMMA(1mg/kg)を静注し、更に約60分各種パラメータを計測した。尚、胎仔の心拍数が150/分以上となることが多いため、拍動流ECMOは心拍数2に対し拍動1の割合で行った。動脈血pHは開始後60分で定常群が低値を示し、L-NMMA投与後その低下は進行した。Base ExcessもpHと同様の傾向を示し、L-NMMA投与後、定常群での低下がみられた。心拍数は両群間に差はなかったが、最高血圧は拍動群が高値を示した。L-NMMA投与直後にはモニター上、最高血圧の上昇がみられたが、その30分後には上昇は明かでなかった。上行大動脈血流量は開始後60分で定常群がやや低値を示したが、L-NMMA投与後、定常群での低下は顕著となった。肺動脈血流量は開始後60分までは差がなく、L-NMMA投与後、定常群の低下が顕著となった。左腎動脈血流量は拍動群が高値を示し、L-NMMA投与後も同様であったが、L-NMMA投与前に比し低下傾向がみられた。腎組織血流量は開始60分後に拍動群が高値を示した。L-NMMA投与後も、60分後に拍動群が高値を示した。血漿ノルアドレナリンは両群間に差がなかったが、L-NMMA投与後は定常群が高値を示した。血漿アドレナリンは開始時に比し漸減傾向を示し、両群間に差はみられなかった。 以上より胎児VA-ECMOにおける拍動流ECMO有用性が示され、無呼吸状態の胎児の呼吸循環状態の維持に十分な役割を果たすものと思われた。また胎児期の循環においても一酸化窒素(NO)系が生理的に重要な役割を果していることが示された。
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