《基礎的検討》研究細目1.ヒト腸管を用いた腸管平滑筋神経支配の検討:ヒト大腸(ヒルシュスフルング病13例、直腸肛門奇形3例)、ヒト6例の小腸を用いた検討では、加齢に伴う腸管神経系の発達は認められなかったが、無神経節腸管でのnitric oxide (NO)作働性神経支配が直腸S状結腸型では欠如しているものの長域型では弱い関与が認められた。研究細目2.家兎を用いた周産期における腸管神経支配発達様式の検討:胎生期では興奮性神経優位であるものの、生後速やかな抑制性神経の発育が認められ、周産期に腸管神経系が機能的発達遂げていた。 《臨床的検討》研究細目1.肛門管部刺激体性感覚誘導電位の検討:慢性便秘12例と対照20例の比較検討では、肛門管電気刺激に対する頭部誘発電位は、対照においては加齢と共に出現頻度が増加し、その発現には年齢因子が関与していた。慢性便秘症では発現率がが有意に低下し、肛門管部感覚神経機能異常が示唆された。研究細目2.経直腸的陰部神経刺激による外肛門括約筋筋電図の検討:正常例における検討では、新生児、乳児期、学童期と加齢に伴う潜時の延長、反応の明瞭化が認められた。一方、ヒルシュスプルング病症例の検討では、術前に潜時の短縮、さらに同時性収縮現象など仙骨神経機能異常を示唆する所見を有する例が存在し、異常例では術後排便機能も不良であった。直腸肛門奇形症例では、病型が重篤になるほど、筋電図異常の発生頻度が増加し、筋電図を用いた仙骨神経機能評価が予後判定・治療方針決定に有用であった。研究細目3.胆道閉鎖症における誘発電位を用いた仙骨神経機能異常の検討:自験対照45例より小児における仙骨神経の発達過程を明らかにでき、それとの比較にて、術後減黄不良例では、馬尾神経の萎縮に起因すると考えられる仙骨神経機能異常が高率に存在し、誘発電位による仙骨神経機能の検討が、予後判定に有用であった。
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