研究概要 |
血液型不適合生体部分肝移植症例において,不適合抗赤血球抗体価の上昇した症例を認めたが,抗体価の上昇は必ずしも拒絶反応と相関していなかった。また細網内皮系手術,手術侵襲および感染による抗赤血球抗体価の変動を検討し,非血液型不適合生体部分肝移植症例,移植以外の一般外科手術症例および小児外科手術症例においても,手術後抗赤血球抗体価の上昇した症例を認めた。すなわち,抗赤血球抗体価の変動には,血液型不適合間の移植における超急性拒絶反応とは無関係な因子が存在することが示された。しかし,抗赤血球抗体価の上昇を示す症例数が未だ少なく,またその背景因子も一定しておらず,抗赤血球抗体価の上昇をもたらす因子を特定するには至っていない。 また,年齢による抗赤血球抗体価の変動を検討した結果,抗赤血球抗体価は,生後6カ月から1歳にかけて上昇が見られ,加齢による抗赤血球抗体価の上昇が確認された。ところが,通常また抗赤血球抗体が存在しないとされている正常新生児においても,抗赤血球抗体価が明らかに上昇している例が認められた。細菌に暴露されていない正常新生児においても抗赤血球抗体価の上昇している例が認められた事実は,生後2〜3カ月で腸内細菌の関与で産生が始まるとされている抗赤血球抗体の産生機序を考える上で,興味ある知見であると考えられた。
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