研究概要 |
平成6年度にひき続き,生体部分肝移植症例,移植以外の一般外科手術症例および小児外科手術症例において,術前術後の抗赤血球抗体価の変動を検討した.また,年齢別の抗赤血球抗体価の分布を検討するため,正常対照群の抗赤血球抗体価の測定を継続した. 血液型不適合生体部分肝移植術後の長期生存例においては,不適合抗体価は術後長期では低値を持続しているが,適合抗体価は術前値に復していた.すなわち,抗赤血球抗体全体の産生が抑制されているわけではなく,なんらかの機序により,グラフト肝に対する不適合抗体のみの産生が抑制されていることが示唆された. 術後早期の抗赤血球抗体価の変動をまとめてみると,血液型不適合生体部分肝移植症例の75%(3/4),血液型適合あるいは同型の生体部分肝移植症例の67%(4/6),小児外科術症例の31%(4/13),成人手術症例の13%(3/24)に抗赤血球抗体価の上昇が認められた.すなわち,自然抗体である抗赤血球抗体を変動させる何らかの因子が存在することが確認された.ところが,抗赤血球抗体価の上昇した手術侵襲の大きい症例に多い印象ではあったが,術中出血量,輸血,術後感染性合併症の有無に関して有意の差はなかった.さらに,移植症例については無肝期の長さ,免疫抑制療法,および急性拒絶反応の有無に関しても有意の差は認められず,抗赤血球抗体を変動させる因子が何であるかは,明らかにし得なかった. 年齢による抗赤血球抗体価の分布の検討から,抗赤血球抗体価は,生後6か月から1歳にかけて上昇が見られ,加齢による抗赤血球抗体価の上昇が確認されたが,1歳以降の抗赤血球抗体価は固体差が大きかった.
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